【仕事と介護の両立支援】第5回:仕事と介護の両立支援プランの設計と実践ポイント解説

10.仕事と介護の両立・介護離職防止

~介護離職を防ぐ「見える化」と継続支援の仕組み~


両立支援プランとは?

仕事と介護の両立を可能にするには、制度があるだけでは不十分です。社員一人ひとりの状況に応じて、具体的な支援内容を整理・合意する仕組みが必要になります。
そこで有効なのが、両立支援プラン(個別支援計画)です。これは、介護を抱える社員と企業が一緒に話し合い、勤務調整や制度利用、業務上の配慮などを文書化して共有するツールです。

厚生労働省もこの仕組みを推奨しており、公式にひな型を公開しています。実務担当者はこのテンプレートを活用しつつ、自社の状況に合わせてアレンジするのが効果的です。
厚生労働省「仕事と介護の両立支援 面談シート 兼 介護支援プラン」

厚労省「仕事と介護の両立支援 面談シート 兼 介護支援プラン」記入方法と記入例


プラン作成のタイミングと流れ

両立支援プランを作成するタイミングは「介護が始まってから」では遅れがちです。以下のような場面で早めに取り入れることが望ましいでしょう。

  • 介護休暇や介護休業を申請したとき
  • 勤務時間の変更や在宅勤務の希望が出たとき
  • 定期面談で家庭の変化が確認できたとき
  • 社員から「両立が難しい」と相談があったとき

実際の流れは以下のとおりです。

  1. 事前面談:社員から状況を丁寧にヒアリング
  2. 支援内容の整理:勤務調整や制度利用を検討
  3. 文書化と合意:プランにまとめ、本人・上司・人事で確認
  4. 定期見直し:数か月ごとにフォロー面談を行い、更新

記載すべき基本項目

両立支援プランには、次の内容を盛り込むのが基本です。

項目内容例
社員の基本情報氏名、所属部署、連絡先
介護の状況続柄、要介護度、介護保険の利用状況
支援の必要度通院の付き添い、食事介助、見守りの有無
勤務の希望時短勤務、在宅勤務、残業制限など
利用予定の制度介護休暇、介護休業、有給休暇の活用計画
業務上の配慮会議参加の調整、業務分担の見直し
今後の見通し状況が変化する時期、次回の面談予定

これらを表形式で1~2枚に整理し、関係者で共有することで、運用がスムーズになります。


面談の進め方 ― 対話で信頼関係を築く

両立支援プランを作る面談は、単なる手続きではなく、社員が「会社に相談してよかった」と思える機会です。実務者は次の点に留意しましょう。

  • 社員が安心して話せる雰囲気をつくる
  • 一度で全て決めず、まずできることから始める
  • 「制度を使っても不利益はない」と明確に伝える
  • 業務調整の現実的な線を上司と共に検討する

また、数か月ごとの中間チェックを設けることで、介護の変化にも柔軟に対応できます。


実務上のメリット

支援の属人化を防ぐ

両立支援プランがあれば、担当上司による対応のばらつきを防ぎ、一貫した支援が可能になります。

業務調整が計画的にできる

事前に業務負担の調整が見える化されることで、チーム全体で協力しやすくなる効果があります。

状況変化に応じて見直せる

介護は時間の経過で変わるもの。プランを軸にすれば、状況変化に応じた柔軟な更新ができます。


まとめ ― 「辞めなくていい」を形にする仕組み

仕事と介護の両立支援プランは、書類ではなく、社員が安心して働き続けるための信頼の証です。
「会社が一緒に考えてくれる」「相談してよかった」という実感が、介護離職を防ぐ最大の力となります。

厚労省のひな型を参考に、まずはシンプルな形から導入し、自社の文化や実情に合わせて育てていきましょう。

仕事と介護の両立支援 ~両立に向けての具体的ツール

 (筆:ベラガイア17 人材開発総合研究所 代表 梅沢佳裕)

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