【介護のカスハラ】第1回:介護現場のカスハラ事例|利用者や家族からの暴言・強い口調にどう向き合う?

ハラスメント防止対策

皆さま、こんにちは

ベラガイア17 の梅沢です。

1.はじめに|介護職を悩ませる「カスハラ」とは?

近年、介護現場で急増しているのが「カスタマーハラスメント」、いわゆる“カスハラ”です。
これは、利用者やその家族など、サービスの受け手からの不当な要求や暴言、暴力などを受ける行為を指します。

「介護はサービス業だ」といわれる一方、介護保険制度には法律や基準があり、利用者の「顧客意識」が強すぎると、その境界を越えた要求が発生します。

介護職は感情労働であり、ただでさえ心身に負担がかかりやすい職種。そこにハラスメントが加わると、職員の心が折れ、離職に至るケースも少なくありません。

今回は、カスハラの典型的な事例をシナリオ形式で紹介しながら、介護職が心を守るために知っておくべき対策を解説します。

【事例】訪問介護での“見えない圧力”と暴言

-登場人物-
●佐藤さん(30代女性、訪問介護ヘルパー。勤続3年目)
●Aさん(70代の利用者、要介護2)
●Aさんの息子(50代、同居)

午後2時。佐藤さんはAさん宅へ訪問。
ヘルパーとしての業務内容は、トイレ掃除、洗濯、簡単な清掃など、契約で決められた範囲です。

佐藤さん「こんにちは。今日はお天気も良いですね。洗濯物、外に干しましょうか?」
Aさん「あぁ、頼むわな」

業務を開始して30分ほど経った頃、同居の息子が帰宅。険しい表情で玄関に現れ、開口一番、怒鳴るように言いました。

息子「なにやってんだよ!この間来たとき、台所の流しが全然綺麗になってなかったって親父が言ってたぞ」
佐藤さん「申し訳ありません。ですが、台所は契約の中に入っておらず、他の担当者と役割を分けておりまして…」
息子「は?そんなのこっちは知らねぇよ。うちの金で来てんだから、全部やるのが当然だろ?」

佐藤さんは冷静に説明を試みるも、相手の怒りは収まらず。

息子「ヘルパー変えてくれって言ったら変えられんのか?何の役にも立たないじゃねぇか!」

このような“家庭内での誤解”と“顧客意識の暴走”が組み合わさったカスハラは、訪問介護の現場で頻発しています。

佐藤さんはその日、自宅に帰っても気持ちが晴れず、夕食も喉を通りませんでした。

「私、何か悪いことしたのかな…」と自分を責めながら、眠れぬ夜を過ごしました。

2.カスハラはなぜ起きる?介護現場の背景

介護サービスは「契約に基づく公共性のある福祉サービス」です。

しかし、利用者や家族の中には「金を払っているのだから、何でもやるのが当然」と誤解している方も少なくありません。

また、高齢の利用者は体調や気分に左右されやすく、家族も精神的に余裕がない状況が多く、感情的になりやすい構造があります。

3.カスハラがもたらす深刻な影響

カスハラは、単なる不快な言動にとどまらず、以下のような影響を職員にもたらします。

  • 恐怖感や不安感により、仕事に行きたくなくなる
  • 他の利用者への対応にも萎縮し、サービスの質が下がる
  • 報告できずに孤立し、うつ傾向や休職・離職に至る

実際に、介護職の離職理由の上位には「人間関係のストレス」「心の疲弊」が常に含まれており、カスハラも大きな要因となっています。

4.カスハラへの初期対応|3つの基本姿勢

利用者・家族へのカスハラ対応の前提として考えるべきことは、利用者と家族をそれぞれ別個に捉え、利用者については認知症などに起因する障害特性が暴言や暴力に影響しているかどうかを判断することです。

介護職は、介護専門から考えると、利用者の障害特性に対しは、個別ケアをチームで検討し、対処をしていかなければなりません。

家族のカスハラについては、以下の内容に沿って対処行動をとっていきましょう。

【カスハラ対応・3つの基本姿勢】

①「理不尽なことは理不尽」と線引きする勇気

まず大切なのは、「自分が悪い」と思い込まないことです。

介護職も人間です。

敬意なく扱われることに対して、「それは違う」と心の中で線引きするだけでも、自分を守る第一歩になります。

② 冷静かつ丁寧な応対を心がける

相手が怒っている時こそ、こちらが冷静さを保つことが重要です。事実だけを簡潔に伝え、誤解がある場合には契約書やサービス計画書を用いて説明します。

③ すぐに記録し、職場に報告・相談する

「自分だけで抱え込まないこと」が最も重要です。発言内容、日時、状況などを記録し、できれば上司やサービス提供責任者に早めに共有しましょう。

5.まとめ|「職員を守る」文化が介護を支える

介護現場におけるカスハラは、一人の力ではどうにもならないケースも多くあります。
だからこそ、職場全体で「職員を守る文化」を育てていく必要があります。

  • 「報告してもいい」「我慢しなくていい」雰囲気づくり
  • 就業規則や契約書への明文化で、対等な立場を確保
  • 感情的な相手への応対は「冷静な記録」と「チームでの対応」で乗り切る

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