――現場をつなぐ中堅職のフォロワーシップ
1.板挟みに悩む中堅リーダーの現実
介護・福祉の現場で数年経験を積み、中堅リーダーとして任されると、多くの人が直面するのが「板挟み」です。
- 管理職からは「業務改善を進めてほしい」「効率化を図れ」と指示される。
- 現場スタッフからは「これ以上は無理」「忙しすぎて改善なんてできない」と不満の声が上がる。
- 利用者や家族からも要望やクレームが寄せられる。
その狭間で、リーダー自身も疲弊してしまうことが少なくありません。
ここで大切になるのが、現場を調整するフォロワーシップです。
調整とは「上司と部下の間に立って、両者をつなぎながら落としどころを見つけること」。これは決して妥協ではなく、現場全体を前進させるための役割です。
調整力を発揮できる中堅リーダーは、チームの信頼を集め、結果的に職場全体の雰囲気を変えていきます。
2.調整役としてのフォロワーシップをどう発揮するか
では、実務で調整役を果たすには、どのようなフォロワーシップが必要なのでしょうか。
(1)「双方の言葉」を翻訳する
上司の言葉は抽象的になりがちです。例えば「業務効率化」と言われても、現場スタッフには「どうすればいいのか分からない」と映ります。ここで中堅リーダーが「申し送りを10分に短縮しよう」「記録のチェックリストを活用しよう」と具体化して伝えることで現場は動きやすくなります。
一方、現場スタッフの不満や要望もそのまま上司に伝えるのではなく、「○○の点で負担が大きいので、△△の工夫をすれば改善できます」と解決案を添えて報告することが大切です。
(2)「公平な立場」で意見を扱う
調整役が偏った姿勢を見せると、信頼を失います。
「上司の味方ばかり」「現場寄りで批判的」と見られないように、あくまで中立的な立場で双方の声を扱うことが重要です。公平な姿勢は、自然と信頼関係を築きます。
(3)「小さな合意」を積み重ねる
大きな改革は一気に進みません。むしろ小さな改善を現場と共有し、「やればできる」成功体験を積み重ねることが調整の力です。
たとえば「申し送りを5分短縮」や「入浴介助の記録方法を統一する」といった小さな取り組みを確実に実行し、その効果を見える化することで、チームの協力が得やすくなります。
まとめ
中堅リーダーは、上司と現場スタッフの板挟みという難しい立場にあります。しかしそこでこそ、現場を調整するフォロワーシップが力を発揮します。
- 上司と現場の言葉を翻訳し合い、解決策を見せる。
- 公平な姿勢で双方の信頼をつなぐ。
- 小さな合意を積み重ね、前進の実感を共有する。
調整役としてのフォロワーシップは、チームの空気を変え、現場を安定させる大きな原動力となります。
次回は「チーム成果を高めるフォロワーシップ ― 小さな改善の積み重ね」について解説します。

