――教えるより支える伴走者としての役割…
1.「教える」だけでは人は育たない
介護・福祉の現場では、後輩や新人の育成は中堅リーダーにとって避けられない役割です。特養やデイサービス、障害者支援施設、児童養護施設など、どの分野でも新人が現場に入ってきます。しかし、よくあるのが「やり方を教えたのに、なかなか身につかない」という悩みです。
新人が伸びない原因は、単に知識不足ではありません。
- 現場の忙しさに圧倒され、自信をなくしてしまう
- 「失敗したら怒られる」と萎縮してしまう
- 覚えることが多すぎて混乱している
こうした心理状態のままでは、どんなに丁寧に教えても力を発揮できません。だからこそ必要なのが 「支える」視点を持ったフォロワーシップ です。
フォロワーシップによる育成では、先輩が上から一方的に指導するのではなく、横に並んで伴走する姿勢を重視します。具体的には以下のような関わり方が効果的です。
- 観察して気づく:新人の表情や行動をよく見て、困っているタイミングを察知する
- 声をかけて安心させる:「ここまではできているよ」と小さな達成を認める
- 失敗を責めず次につなげる:「こうすればうまくいくよ」と改善の道筋を示す
このように「支える」関わりがあることで、新人は安心して挑戦し、自ら考えて動けるようになります。結果として成長が早まり、現場全体の安定にもつながります。
2.フォロワーシップで新人を「自立」へ導く
中堅リーダーが育成で目指すべきゴールは、後輩を「指示待ち」から脱却させ、自立した職員へ育てることです。
そのために重要なのは、段階に応じた関わり方です。
- 初期段階(右も左も分からない時期)
→ 手取り足取り教える。小さな成功体験を積ませて自信を育む。 - 中期段階(ある程度できるようになった時期)
→ あえて任せてみる。失敗したら一緒に振り返り、改善方法を考える。 - 後期段階(独り立ちに近づいた時期)
→ 自分の判断で行動させる。結果についてフィードバックを与え、責任感を育む。
このプロセスを進めるうえで、中堅リーダーが発揮するフォロワーシップは 「伴走者」としての支援 です。
「教える人」から「見守り、支える人」へと役割をシフトさせることで、新人は安心して挑戦し、自ら学ぶ姿勢を身につけます。
また、忘れてはならないのは 新人の背景や強みを理解すること。たとえば、障害分野で経験のある人が高齢分野に入る場合、まったくの未経験者ではありません。得意な部分を活かしながら新しい分野に馴染ませると、意欲が落ちにくくなります。
まとめ
中堅リーダーにとって「後輩・新人を育てる」ことは避けられない使命です。
- 教えるだけではなく支えることが、成長を促す最大のポイント。
- フォロワーシップの伴走姿勢が、新人を自立へと導く。
次回は「現場を調整するフォロワーシップ ― 板挟みの中でチームをまとめる」について解説します。