【アンガーマネジメント】第4回:現場で使える“言葉の選び方”で怒りを和らげる

2.アンガーマネジメント

〜介護・福祉職のための感情コントロール実践術〜

介護・福祉の現場で働く皆さん、こんにちは。
前回は「呼吸法と身体の使い方」による感情コントロールをご紹介しました。
今回は、より実践的に「言葉の選び方」に注目します。

日々のケア業務では、利用者やご家族、同僚との会話のなかで「つい感情的になってしまった」「思っていない強い言葉を口にしてしまった」と後悔することはありませんか?
実は、怒りを和らげるには「何を伝えるか」よりも「どう伝えるか」が大きなカギを握ります。

ここでは、現場で活かせる具体的な言葉の選び方と、その効果的な使い方をご紹介します。


1.感情をぶつけずに事実を伝える「I(アイ)メッセージ」

怒りにまかせた言葉の多くは「あなたが悪い」というYou(ユー)メッセージになりがちです。
例:

  • 「あなたが遅いから困るんです!」
  • 「どうしてちゃんとやってくれないんですか!」

これでは相手を責める印象が強く、関係性が悪化する原因となります。

一方で、I(アイ)メッセージを使うと、感情をぶつけずに事実と自分の気持ちを伝えられます。
例:

  • 「予定より遅れると、私も次の対応に影響が出てしまいます」
  • 「急に変わると、私も準備が間に合わずに困ってしまいます」

ポイントは、自分の感情や困りごとを主語にすること。
これだけで相手の受け取り方は大きく変わり、対話が前向きになります。


2.語尾やトーンの工夫で印象を変える

同じ言葉でも、語尾や声のトーンで相手に与える印象はまったく違います。
怒りが強いときほど、無意識に語尾がきつくなりがちです。

例:

  • 「早くしてください!」 → 怒り・命令に聞こえる
  • 「できれば早めにお願いできますか?」 → 協力依頼に聞こえる

また、トーンも大切です。
声を少し落ち着けて話すだけで、相手は「冷静に話している」と感じ、受け止めやすくなります。

介護・看護職は「声かけ」が仕事の一部。だからこそ、語尾や声の高さを意識するだけで、感情のぶつかりを防げるのです。


3.「でも」「しかし」を避けるリフレーミング

会話の中で「でも」「しかし」を多用すると、相手の意見を否定している印象を与えます。
否定から入ると相手は防御的になり、怒りがぶつかりやすくなります。

そこで活用できるのが”リフレーミング(言い換え)”です。
例:

  • 「でも、難しいですね」 → 「そうですね、その一方でこういう方法もあります」
  • 「しかし、できません」 → 「現状では難しいのですが、こうなら可能です」

否定の接続詞を避け、肯定+提案の流れに変えることで、会話が建設的になります。


4.介護・看護の場面別フレーズ集

最後に、実際の介護・看護現場で使えるフレーズ例を紹介します。

利用者対応

  • 「早くして!」と言われた時
     → 「お待たせしてしまいすみません、すぐに伺いますね」
  • 拒否が強い場面
     → 「無理にではなく、○○さんのペースでできるところから一緒にやりましょう」

ご家族対応

  • 厳しいクレームを受けた時
     → 「ご不安にさせてしまったことを申し訳なく思います。どうすれば安心いただけるか一緒に考えさせてください」

職場内(同僚・後輩)

  • 業務が滞った時
     → 「手が回らなくて困っているんだ、少しだけ協力してもらえますか?」
  • 意見が対立した時
     → 「なるほど、そういう見方もありますね。そのうえで、私の考えはこうです」

こうしたフレーズをストックしておくと、とっさの場面でも感情的にならずに対応できます。


まとめ|言葉の選び方が感情を変える

怒りを和らげるには、感情を抑え込むのではなく、言葉の伝え方を工夫することが効果的です。

  • Iメッセージで感情をぶつけずに事実を伝える
  • 語尾やトーンで印象をやわらげる
  • リフレーミングで会話を前向きに変える
  • フレーズ集を日常に活かす

これらはすべて、介護・看護職が現場で即実践できる技術です。

次回は、「怒りを未然に防ぐ“環境づくり”」についてご紹介します。
職場全体で感情の安定を支える工夫を一緒に考えていきましょう。

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