はじめに
高齢者施設の「縁の下の力持ち」、それが生活相談員です
「生活相談員って、結局どんな仕事をしているんですか?」
介護現場でよく聞かれるこの問いに、あなたは即答できますか?
特養(特別養護老人ホーム)やデイサービスなどの介護施設において、生活相談員は“なんでも屋”と思われがちです。しかし実際は、利用者・家族・職員・地域をつなぐ【連携の要(かなめ)】として、施設全体を支える重要な役割を果たしています。
本連載では、介護施設における生活相談員の具体的な業務内容から、ソーシャルワーカーとしての視点、やりがいや課題までをわかりやすく解説します。第1回の今回は、生活相談員の「全体像」に焦点を当てます。
1.生活相談員の基本的な役割とは?
生活相談員は、介護施設で以下のような役割を担っています。
- 利用者・家族との面談と相談対応
- 入退所(デイ:利用開始・中止や終了)手続き、契約・重要事項説明
- ケアマネジャーや医療機関との連絡調整
- 苦情対応や事故報告の対応窓口
- 担当者会議やカンファレンスへの出席
- 地域や行政との関係構築
単なる「事務職」ではなく、【利用者支援の中心的な存在】でありながら、事務・対人援助・制度理解・調整力すべてが求められるジェネラリストです。
2.なぜ「何でも屋」になってしまうのか?
看護職のように業務独占により役割が明確化されているわけではないので、生活相談員の業務範囲は施設や管理者の考え方によって大きく異なります。
結果、「とりあえず相談員に回しておこう」という風潮が根づいてしまうこともしばしば。これにより、制度上の業務を超えた負担がかかるケースも見られます。
あるデイサービスでは、生活相談員が毎朝の送迎から日中のレク支援、夕方の記録入力、さらには職員間トラブルの調整まで担っており、「結局、何が本来業務か分からない」という声が上がっていました。

3.「ソーシャルワーカーとしての機能」を忘れずに
生活相談員の基本資格としては、社会福祉士や社会福祉主事任用資格が求められています(※老人福祉法第20条の5より)。これは、生活相談員が「対人援助の専門職」としての役割を持つことを示しています。
つまり、単なる事務職や連絡係ではなく、本質的には「ソーシャルワーカー」としての視点と機能を持つ必要があるのです。
たとえば、家族が介護に疲弊して心身ともに限界に達しているケースでは、利用者本人だけでなく「家族も支援の対象」として捉える必要があります。このようなマクロ・メゾ・ミクロの視点が、生活相談員には欠かせません。
4.梅沢式・生活相談員の5つの目線とは?
筆者が現場支援で大切にしているのが、生活相談員の「5つの目線」です。
- 利用者の目線:「その人らしさ」を支える支援の軸
- 家族の目線:家族の事情や想いをくみ取り、共に支援
- 職員の目線:介護職・看護職との連携やフォロー
- 地域の目線:社会資源との橋渡し、情報提供
- 経営の目線:加算・稼働率・クレーム対応などの経営的貢献
この5つの目線を意識することで、「ただの雑用係」ではなく、施設経営に貢献できる【戦略的な相談員】へと進化できます。
5.現場で起こるリアルなエピソード
ある特養では、急な入所希望が舞い込んできました。家族は切羽詰まった様子で「どこでもいいから明日入所させたい」と言います。
生活相談員はただ「空きがありません」と断るのではなく、地域包括支援センターや他施設と連携して短期入所の受け皿を確保。そのうえで、ご家族に丁寧に状況を説明し、信頼を得ました。
「断るのではなく、別の道を示す」ことが、生活相談員の大切な対応姿勢です。
6.まとめ:生活相談員は「介護の橋渡し役」であり「調整役」
介護現場にはさまざまな立場・専門職・価値観が存在します。生活相談員はそれらをつなぐ通訳者であり、調整役でもあります。
そして何より、利用者とその家族の「暮らし」を支える専門職として、日々の小さな気づきと行動の積み重ねが求められます。